真っ白なキャンバス

三浦菜々子
INTERVIEW
「走りつづけるしかないんですよ」――三浦菜々子の決意ー
2022.06.30インタビュー&撮影:宗像明将
2022年7月9日に河口湖ステラシアターで「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」を開催する真っ白なキャンバス(通称白キャン)。過去最大規模のワンマンライブにして、初の野外ライブ。そして、会場や山梨県など関係各所との事前相談をしたうえで、コールアンドレスポンスを解禁し、コロナ禍前のスタイルで開催されるライブだ。メンバーはどんな想いでライブに臨むのだろうか。三浦菜々子に話を聞くと、「もう日々ずっと追いこまれて、焦って、めっちゃ苦しい」とまで語るのに、「自分が天才じゃなくて良かったな」とも言う。その理由とは?(インタビュー&撮影:宗像明将)

我慢してきたものを全部出しきってほしい

――声出しライブができると聞いたとき、どう思いましたか?
三浦「あ、そんなことができるんだ」って最初びっくりしたけど、ファンのみんなもずっと声を出したかっただろうから、良かったなって。でも、コロナ禍になってから白キャンを知った人から、「声出しライブとか行ったことない」とか、白キャンの昔の映像を見て「えっ、こんなだったんだ、ちょっと怖いかも」みたいな声もあって。そういう人たちは大丈夫かな、っていうのもありました。でも、今は楽しみです。だって2年半も声出しがないし、それこそ浜辺(ゆりな)ちゃんが自分の名前をライブ中に呼ばれたことがないと言ってて。今、MCを言っても反応が返ってこないじゃないですか。それに慣れかけてはいるけど、河口湖では反応が返ってくるのかなって思うと、やっぱり楽しみですね。
――今回のライブをやることって、どんな意味があると思いますか?
三浦発表されたら、最近来てなかった人が「行きたい」って言ってたりして、「あー、まだ行きたいって思ってくれるんだ、一応ニュースを気にかけてくれてるんだな」と感じて。声出しが怖い子も、「一回行ってみようかな」っていう子もいるし。みんな安全に楽しんでもらえるライブになるといいなと思います。たまに、みんな楽しくなっちゃって声が漏れちゃうときあるじゃないですか。でも、今度は注意をしなくていいし、みんな気にせず声を出せるんだなって思うと、この2年半の我慢してきたものを全部出しきってもらえれるといいなと思います。
――昔からのファンにも来てほしいんですね。
三浦たぶん現体制を見てない人もいると思うし、コロナ禍になってから2回体制が変わってるから、「最近見てないし、もうわかんないな」みたいな人も気軽に遊びに来てほしいですね。入場無料だし、野外で単独公演は初だし。
――ファンの声がない白キャンのライブって、どう思ってましたか?
三浦前までの白キャンって、みんながうしろで円になってMIXを打ってて、「ライブ見てないやん!」みたいな感じで(笑)、その場が楽しいという人もいたから、やっぱり声出しができなくなって離れちゃう人もいて。白キャンって、声出しありでファンの人と一緒にライブが成り立っていたとこもあったから、それは不安でした。しかも、声が出せなくてマスクしてると、目しか見えないじゃないですか。だから最初は「楽しいんだろうか?」っていうのはありましたね。来てくれる人たちは楽しんでくれてるんですけど。

焦らずにいられない

――白キャンが7人体制になってから、ダンスや歌で意識した部分ってありますか?
三浦ダンスは、「みんなで合わせよう」みたいな意識がめちゃめちゃ強くなって。コロナ禍以前は、みんなが一緒に盛りあがって楽しんでいれば成功みたいな感じだったのが、やっぱりパフォーマンス見られるようになって、自分たちでも動画を見て「やばいね」って、ライブ前にレッスンを入れて、その日のセットリストのつなぎを考えたり、立ち位置を会場の広さに合わせて考えたり、「ここ揃ってない」とか話し合うようにはなったりしました。自分たちの意識はやっぱり変わりましたね。
――7人体制になってからの白キャンって、三浦さんはどう見てますか?
三浦とてもいいんじゃないかな。2人(鈴木えま、麦田ひかる)が辞めちゃって、浜辺ちゃんが入ってきたときに、ファンの人が「こんな白キャンがあったら」みたいな画像や動画を上げていて、6人体制の素材に浜辺ちゃんを追加してて。2人がいなくなったから離れちゃった人もいるし、浜辺ちゃんが入ってきてからの5人時代に白キャンを好きになった人もいたし、そこが今合体して、一番最強の形なのかなと思うし。びっくりしたのが、えまちゃんがすごく歌で声を出すようになったことで。すごくいい声で、白キャンの中でも鍵を握る声をしてるのに、苦手意識があったのか、あんまり歌わなかったけど、「わたしとばけもの」(2021年11月20日に開催されたワンマンライブ)のときのユニットでめっちゃ歌ってて、「あ、こんな歌えるんだ」みたいな。より一層いい声が白キャンの曲に入って、「あー、いいな」って思って聴いてました。最近ボイトレでも、ひかるちゃんが声を出すようになって、「いいな」って思って聴いてます。2人ともMCもやってくれるし、インタビューでもしゃべってるし。
――三浦さんの歌の負担は減ったと思いますか?
三浦増えたと思います。でも、減らされたくない。新曲ができるとき、いつも怖いんですよ(笑)。歌割りも、Stereoのときは気にしたことがなくて、白キャンに入って、小野ちゃん(小野寺梓)が「菜々子ちゃん落ちサビだね、歌いだしだね」みたいに教えてくれて、それから自分がどこを任されてるのかを考えるようになって。そしたらすごく怖くなって、「ある日突然外されるんじゃないか?」とかめっちゃ考えちゃって、ずっと怖い。みんなの歌がうまくなると、めちゃめちゃ嬉しいけど、その分、自分の立場が危ぶまれるから余計怖くて(笑)。「もっと頑張んなきゃ」って日々追いこまれてます。青木(勇斗/プロデューサー)さんにも「焦ってもいいことない」って言われるけど、「焦らずにいられないじゃん!」って思って(笑)。
――そんな焦りのなかで、河口湖の成功に向けての課題は何だと思いますか?
三浦ええっー! どうしよう、課題山積みですね。今、ダンスの先生のゲッツさんにも揃えるためのレッスンをしてもらってて、毎回「今日はこの曲」って決めて、その曲を2時間とか3時間とかやるんですけど、それでもライブになると、自分もめちゃめちゃ感情的になって早取っちゃったりするし。レッスンって冷静にできるけど、いざステージに立つとみんなそれぞれの癖が出ちゃったりするから、なかなかビシッとライブ映像を見ても揃うことがなくて。最近だと、ラストアイドルさんやukkaさんを見たら、「うわ、すごいな、なんでこんな揃うんだろう?」って感じて。それぞれの癖とか個性を見て「バラバラになっちゃうところも良さだよ」ってファンの人が言ってくれたりもするけど、それって白キャンを好きだから成立してることであって、好きじゃない人が見たら「このグループ、バラバラじゃん」って驚かれちゃうと思うから、絶対にみんな揃ってたほうがいいし。
――個人の課題としては、さっき話していた歌ですか?
三浦煽りも(笑)。レパートリーなさすぎて、同じようなことばっかり。白キャンは煽りや曲頭でしゃべることがけっこう多くて、でも別にバチバチに煽りが得意な子もいなくて、煽りがかっこよく決まるようになったらいいんだろうなって。
――そして、河口湖の当日はどんなライブになるといいと思いますか?
三浦私、ライブが終わっていつも落ち込んじゃうから、「楽しかった」と言いたい。「今日ちょっと良かった」って思っても、動画を見ると「こんなつもりじゃなかったのに」ってことがよくあって(笑)。思った通りにいかないなあ、とは思いますね。

自分が天才じゃなくて良かったな

――しかも今、青木さんがかねてから目標と公言している幕張メッセにも向かっているわけですよね。
三浦それはやっぱり感じますね。その事実だけが前に行ってしまって、自分が追いつけてなさすぎて焦ってて……(笑)。青木さんは、もう前だけ見て走ってて、小野ちゃんは病んだりもするけど、絶対食らいついていくんですよ。みんな、なんだかんだついてくんだろうなって感じだけど、めっちゃ自分が不安(笑)。自分が頑張るしかないんですけど。
――三浦さんは、自分で自分を否定しているような感じだし、もっと自分を認めてあげていいと思いますよ。それは私も含めて、周囲がちゃんとほめてあげられてないのかもしれない。
三浦すごい欲しがりな人みたいじゃないですか(笑)。でも、私は手のかからない子でいたいです。だって大変じゃないですか。私、白キャンのマネージャーだけはできないです。絶対大変だもん(笑)。
――あはは。自分が手のかからない子でいたいと言っても、それで気持ちがもつものなんですか?
三浦アイドルをずっとやってて、わりと手のかからない子でやってきてるんです。それでここまで来てるから、なんとかなるのかなって思っちゃいます。もたなかったら、まあそのときにどうにかします。
――幕張に向けて、自分自身がどうなってきたいっていうビジョンはありますか?
三浦せっかくそんな大きいところでやるなら、自信を持って立ちたいですよね。自信を持って、ライブを楽しみながらやりたいし、「三浦菜々子、かっけえな」って思わせたいとは思うけど、どうなんだろー……(笑)。変わりたいなって日々思うんですけど、うーん、難しい。でも、最近自分の中でちょっと考えが変わったことがあって。
――それは何ですか?
三浦前までずっと、「天才だったら良かったのに」ってよく思ってたんですけど、最近「自分が天才じゃなくて良かったな」って思うようになって。
――それはなぜ?
三浦もう日々ずっと追いこまれて、焦って、めっちゃ苦しいんですけど、天才だったらこの感情もなかったし、天才だったらたぶん白キャンにいないんだろうな、って思って。もし白キャンが幕張に立ったとき、天才じゃないやつが立ってたほうがかっこよくないですか? 才能のないやつが必死に頑張って幕張まで行ったんだな、ってほうがかっこいいなって思ったら、「自分は凡人で良かったな」って思って。そこら辺にいる子でも立てるんだ、って思ってもらえたらいいなって考えて、苦しくても頑張れます。日々本当にしんどいし、苦しいのに走れるのは、凡人だからもう止まったら動けないんです。走りつづけるしかないんですよ(笑)。