真っ白なキャンバス

麦田ひかる
INTERVIEW
励まされるばっかじゃないようになりたい――麦田ひかるの決意ー
2022.07.07インタビュー&撮影:宗像明将
2022年7月9日に河口湖ステラシアターで「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」を開催する真っ白なキャンバス(通称白キャン)。過去最大規模のワンマンライブにして、初の野外ライブ。そして、会場や山梨県など関係各所との事前相談をしたうえで、コールアンドレスポンスを解禁し、コロナ禍前のスタイルで開催されるライブだ。メンバーはどんな想いでライブに臨むのだろうか。麦田ひかるは、2020年6月に白キャンから卒業し、2021年7月に再加入。自身について「今、自分がたぶん一番足を引っ張っている」と語る。照れくさそうな表情で言葉に詰まりながら、「励まされるばっかじゃないようになりたい」と話す真意を聞いた。(インタビュー&撮影:宗像明将)

全部変わりたい、できるようになりたい

――声出しライブをやると聞いたときはどう思いましたか?
麦田えー……。最初は驚きました。「やるんだ」って。
――驚いたっていうのは、まだ声出しはやらないもんだと思ってた?
麦田やらないもんだっていうか、頭の中になかった。自分的には嬉しいと思った。
――嬉しいと思ったのは、声出しができると何が違うからでしょう?
麦田ファンの方の声が聞こえるのは、きっといつも以上にこっちも一緒に楽しんでる感じがする、だから嬉しい。
――今回のライブをやることって、どんな意味があると思いますか?
麦田えー……意味? 意味? これを成功させないと、今後が難しいって感じ。ここで変われなければ無理だなって。
――変わるというのは?
麦田自分もだし……なんだろ? ……わかんない。
――諦めないでください! 自分の何が変わるといいと思います?
麦田気持ち。いつもの自信……自信じゃないか、パフォーマンス力とか歌とかダンスとか、目に見えるものをまず変えたほうがいいのかな。
――今の麦田さん的には、どれぐらいやりたいことができている感じですか?
麦田えー、でも今わかんないんですよね……(笑)。(マーブルチョコを出して)食べます?
――後でもらいますね。河口湖までに、特にここを変えたい、みたいなものはありますか?
麦田全部変わりたい……(笑)。でも、「変わりたい」じゃないかもしれないです。
――というと?
麦田できるようになりたいです。歌とかダンスとか。
――歌はだいぶ声が出るようになったと思いますよ。東名阪ツアーの名古屋(2021年12月18日)での「アイデンティティ」で、自分のパートをすごくちゃんと歌ってるから感動したんです。そもそも白キャンを抜けた後、もう一度アイドルをやろうとしたのは、どうしてだったんですか?
麦田やりたいと思った。
――シンプルですね。白キャンから離れていた時期、麦田さんはアイドルをやる気はないと言ってたじゃないですか。
麦田(鈴木)えまは「アイドルやりたい」って言ってて、「自分もやりたいな」って思って(笑)。「もう一回やってもいいんだ」って。自分にも、そういう選択肢もあるなと思って。
――つまり、一度アイドルを辞めたら、もうやっちゃいけないと思ってた?
麦田もう戻れないし、なんか違うことじゃないとダメだろうなと思ってて。
――アイドルに戻ろうとしたら、白キャンに戻った展開は、自分でも予想してなかった?
麦田うん。
――「うん」って2文字だから。もうちょいしゃべってくれないと、私の発言で終わります。
麦田それでいいと思う。
――良くないです! そうやって白キャンに戻ってみてどんな感覚ですか?
麦田どんな感覚......? 白キャンに戻って……?
――最初、メンバーはどうでした?
麦田うーん……うーん……。
――これ、そんなに悩む質問なんですか。
麦田ひかる次第、な感じ。
――今はどうですか?
麦田昔みたいだな、って。
――楽しい?
麦田楽しい(笑)。
――ファンの人たちはどうでしたか??
麦田自分たちがもう戻ってくるときにはガラッと変わってて、知らない方の顔のほうが多くて、って感じです。
――麦田さんの特典会に来る新しいファンの人もいるわけですね。
麦田います。
――そういう人たちには、どういうきっかけで来たって言われるんですか?
麦田わかんない。
――あはは。なんかあるでしょ。
麦田「昔の動画があるんで、いるのは知ってたけど、こうして会えるとは思わなくて来ました」って。
――いい話ですね。白キャンに戻ってきてみたら、声出しができないライブになってましたが、どういう感覚でしたか?
麦田えー、でも自分も、辞める前に配信だけのライブにちょっと触れたので。自分がいなかった頃よりは、今はファンの方も入れるし……でも、わかんない(笑)。
――諦めないで! そんなに私をじっと見なくていいですから!
麦田……なんだっけって?

毎日緊張する、明日も緊張する

――話題を変えましょう。7人体制での初の単独公演(2021年9月5日)はどんな感覚でした?
麦田えー、どうだったんだろう……。
――あの日は、開場直前まで、振り付けの先生のゲッツさんが、緊張してる麦田さんにマンツーマンで指導してましたね。
麦田緊張はしました。忘れてしまった曲をたくさん覚えたのもあるし、7人体制で初めてだったんで、緊張はしました。毎日してます。
――今も緊張してるんですか?
麦田毎日緊張してます。
――明日も?
麦田明日も緊張します。
――なんでそんな緊張するんですか?
麦田知らない(笑)。
――あはは。ファンの人の声がないので、以前と比べて調子が狂うことはありましたか?
麦田なかったです。
――昔は、MIXやコールが怖いと言っていたこともあったじゃないですか。
麦田そう思うと、昔より前を見れてる気がする。
――白キャンを一度辞めて戻ってから、ステージ上で笑顔が増えましたよね。
麦田言われます。
――今だと5文字だから、もうちょっと……。
麦田言われます。
――2回言っても10文字だから……。声出しができない状況になって、その中で特に意識したことってありますか?
麦田なんだろう。なんかもう今はみんなについていく感じ。なんか、振りとかも自分で変えちゃうときとかあるから、動画を見てて「なんか違うな」って。揃えたいから、みんなの研究をして真似してます。声出しだと、なんかみんな下向いてたり音楽だけ聴いてたりするけど、声無しだとけっこう見てる人がいるのかなって思って。……なんだこれ(笑)
――ちゃんと話せてますよ!
麦田(マーブルチョコレートの箱をいじって)なんか血が出てきた。
――このウェットティッシュで消毒してください……。4周年ライブ(2021年11月20日)で初披露された新曲「わたしとばけもの」では、イントロから麦田さんのダンスのソロがありましたね。
麦田なんか自分、あんまりダンス担当になりたくなくて。
――現状と真逆のことを(笑)。
麦田ダンス担当になりたくなかったんですよ。白キャンに戻ってきて、「あ、やっぱりここで私、ダンス担当をやらなきゃいけないのか」ってなって。まあ歌うたえないし、とりあえず取柄と言ったらこんくらいしかないのかなって思って、「踊るのかー」ってなりました(笑)。
――踊ってみて自信はつきましたか?
麦田(大きな目で筆者を見ながら首をかしげる)……ついてないです。あ、でも前よりついたかもしれない。
――前より自信がついたもしれない?
麦田わかんない。
――歌の自信はどうですか?
麦田歌は、前はボイトレですら声を出すことがちょっと難しかったけど、今はあんまり詰まることなくやってます。
――いい話ですね。7人の白キャンとして、ステージを一緒にやってみてどうでしたか?
麦田えー……見たことない。
――まぁ、麦田さんもステージにいたら見たことはないですよね。
麦田どういう感じの答えを言えば……?
――今の7人の白キャンは、麦田さんにとってはどんな感じのものですか?
麦田頑張ろう。

今、自分がたぶん一番足を引っ張っている

――ひらがなにすると5文字です。もう次の話題に行きましょう。河口湖のライブが成功するための課題ってなんだと思いますか?
麦田えー……。全部難しい。でも今、自分がたぶん一番足を引っ張っている。吊るされて、下からほかのメンバーの足を持って引っ張って、私がブラーンってしてる。
――それを変えるにはどうしたらいいと思います?
麦田みんなのいいところを勉強してって。(両手で一直線を作って)このラインまでみんなもうできてるけど、自分はまだ全然届いてないから、早く越えなきゃなって。
――気合いはありますか?
麦田気合いはあります。……気合い?
――「やろう」っていう気持ちはあるかってことです。
麦田(黙ってうなずく)
――うなずいただけだと0文字です……。どうやったら、みんなができるラインに追いつけていると思いますか?
麦田えー、わかんない(笑)。
――そんなびっくりしたような顔で私を見ないでください。
麦田しゃべれない(笑)。
――それでも次の質問に行きますから。河口湖の当日はどんなライブにしたいですか?
麦田当日は、めちゃくちゃ楽しみたいけど、安全がいいなーって。でも……なんだろう……どんなライブ? もうダメだ……(笑)。
――諦めないで……!
麦田(照れくさそうに)みんなが笑って、楽しそうにしている姿が見たい。
――そうなりますよ。今の白キャンは、かねてからの目標の幕張メッセに向かってるじゃないですか。自分自身が今後どうなっていきたいと思いますか?
麦田わー……。なんかもう全部未来のことです、質問が。
――未来のことを聞かれてもわかんない?
麦田幕張に向けて、青木(勇斗/プロデューサー)さんにも言われたんですよね、どうしていきたいか。そのときも答えられなかった。
――でも、今この瞬間は、幕張に向けてどうなりたいですか?
麦田……励まされるばっかじゃないようになりたい。
――それは誰から励まされてるんですか?
麦田ファンの方。
――今はファンの人に励まされてばっかり?
麦田「励まされる」ってなんですっけ?
――なんで私に聞くんですか。「できるよ、頑張って」って応援されるみたいな。
麦田(黙ってうなずく)
――その調子で青木さんと話してて、「なんかないのか」と言われないんですか?
麦田言われます、だから答えられない。これ答えるのって重要すぎて、ちゃんと考えなきゃいけないから、なんかわかんなくなっちゃう。
――でも、麦田さんって曖昧なことを言わない人じゃないですか。きれいごととか、適当なことを言わない。麦田さんが何も考えてないわけじゃなくて、適当なことを言いたくない人だっていうことは、そのまま載せていいと思うんです。
麦田そうかな(笑)。
――それでいいと思いますよ。インタビューとして成立するかどうかはギリギリですけど。
麦田だから、どうしようって(笑)。
――2019年に「MARQUEE」で単独インタビューをしたじゃないですか。あのときはけっこうしゃべってたのに。
麦田ですね。たぶん人に話を聞いてほしかったんだと思います。
――今日は特に聞いてほしい話はないんですか?
麦田(即答で)特に。
――あの、もしかしてインタビューを終わらせようとしてます?
麦田はい(笑)。終わりました(笑)。
――え、麦田さんが決めるんですか……!?
麦田(筆者のiPhoneのメモを見て)もう質問ないですもん。
――じゃあ終わりますよ!