真っ白なキャンバス

橋本美桜
INTERVIEW
目の前のことをやり遂げて上にあがりたい――西野千明の決意
2022.07.02インタビュー&撮影:宗像明将
2022年7月9日に河口湖ステラシアターで「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」を開催する真っ白なキャンバス(通称白キャン)。過去最大規模のワンマンライブにして、初の野外ライブ。そして、会場や山梨県など関係各所との事前相談をしたうえで、コールアンドレスポンスを解禁し、コロナ禍前のスタイルで開催されるライブだ。メンバーはどんな想いでライブに臨むのだろうか。西野千明は、加入当初こそダンスが苦手だと泣いていたメンバーだが、今では白キャンのパフォーマンスを強く意識するようになった理由とは。そして、河口湖で水を使いたいと熱く語る真意とは……?(インタビュー&撮影:宗像明将)

コロナ禍、ダンスの基礎を学んだ

――声出しライブができると聞いたときはどう思いましたか?
西野千明は嬉しいと思いました。野外ライブだからちゃんとルールを守ればクラスターも出ないし、東京でやるよりもリスクが低いし、アリだなって、そのとき私は思いました。強いて言うなら、不安なのは「人来るかなー」ぐらいかな。場所を聞いて、東京に比べたらめちゃめちゃ遠いなって思って。TIFのガンダムのところで撮った動画があるじゃないですか、めちゃめちゃ人がいるやつ(2019年8月の『TOKYO IDOL FESTIVAL 2019』のFESTIVAL STAGE)。あれぐらいの時期だったら、ちゃんとみんな来てくれると思うけど、今現場が落ち着いちゃってるから。コロナの時期だし、いろいろ変わってるから、人が来てくれるかなっていうのはけっこう心配ではある。
――今回のライブをやることにどんな意義があると思いますか?
西野幕張を目指すという前提があるんで、幕張を成功させるための過程だと思ってる。ここで成果を残さないと幕張はガチで無理。あえておっきい野外ライブで、しかも人が渋谷みたいに密集しないところで、風通しの良いところで、クラスターもで出ない形で、ほかの声出しライブもよりも安全にリスクを高めずできるっていうので、たくさんの人にも来てもらえるかもしれないし……何を言ってるんだ千明、なんかごちゃごちゃになってきた、何言ってましたっけ?
――普通に話せてますよ! 声出しライブをできる意義についてです。
西野活気をちょっとでも戻す。声出しできるっていうのはでかいと思うから。若い人も増やしたいし、その人たちに、そのまま幕張に来てもらいたい。だから学生限定ライブもやるし(2022年4月24日に『白キャン学園』を開催)。
――声出しができなくなってからライブをやるのは、どんな感覚でしたか?
西野ライブができなくなった代わりにちょっとずつ配信ライブがはじまったじゃないですか。その時点では「リハーサルですか今?」みたいな感覚に陥ったり。お客さんが入れるようになってからも、千明は最初から声出しを見てきたから、「ファンの人、楽しんでるのかな、笑ってるのかな?」って、すごい怖かったですね。みんなマスクしてるから表情がわかんなくて。最初、その空間に対して違和感があって、「なんか変だな」って思いながらも、だんだん慣れてきて、今は全然平気なんですけどね。あと、白キャンって担当カラーが定められてないから、基本ペンライトがいつもライブ中に振られてなかったんですよ。そういう風習がないままコロナ禍になって声出しNGで、「ライブやります」ってなったから、対バンでほかのアイドルさんはすごいいろんな色のペンライトが振られてるのに、白キャンになってからパッとなくなって、余計に盛りあがってるのか、楽しんでくれてるのかがわかんなくて。徐々に最近は増えてきて嬉しいですけど、最初はめちゃめちゃそういうのもあって……(小声で)怖かった。
――声出しができなくなって、歌やパフォーマンスで特に意識しことはありましたか?
西野やっぱ音程。配信ライブって、声がそのまま見てくれる人に届くし、「なんかもうモロバレじゃん!」みたいな(笑)。歌はそんなにうまくないけど、みんなのコールやMIXでなんとかごまかしきれたところがあったんですけど、みんなコールできなくなったから、みんな見て聴くじゃないですか。元のクオリティーがめちゃめちゃ低かったから、見られてること、聴かれてることを意識してライブをするようになりました。(浜辺)ゆりなが入ってきたときも、振りを教える側になって、ダンスの面では自分でも基礎をちゃんと学んでそっからグンってパフォーマンスがめちゃめちゃ上がったって言われる。だからコロナ禍になったのは嫌だったけど、自分を見直すにはいい機会だったのかなって。
――ライブを見ていると、西野さんの表情がすごくいいなと思うんですよ。「共に描く」の「君自身が」のところとか。
西野千明、そこ自分でも気に入ってる! 自分も歌ってるんです、「HAPPY HAPPY TOMORROW」とか楽しい歌でも、自分が好きなフレーズは歌ってる。たまにマイクを下げるのを忘れて慌てて下ろすけど(笑)。「共に描く」は、「君自身が」で口を開けてニコーってしながら。「共に描く」、好きですよ、表情を作りやすいから。

Instagramを頑張りたい、でもラーメンはすぐ食べたい

――白キャンが7人体制になってからはどんな感覚でした?
西野ライブは「やっぱ7人って多くね?」って思って(笑)。7人になった瞬間、新しいフォーメーションができるじゃないですか。人数多いほど複雑で、それで頭がいっぱいになるし、わかんなくなって。あと、歌割りも変わるし、(鈴木)えまと(麦田)ひかるちゃんが歌うところもちょこちょこ歌っちゃったりして、「ああ、歌っちゃダメだ!」みたいな(笑)。覚え直すのは、けっこう大変だったかもしれない、だけど楽しいです。「迫力あるね」みたいに言われるけど、それは柔らかく言ってくれてるだけで、たぶんまだ現段階でも一体感みたいなのがないんですよ。人数が多いほどバラつきがわかりやすいから、それをみんなと共有して揃えるっていうのが今すごく課題。すごい難しい。
――そういう課題も抱えながら、河口湖でのライブを成功させるためには何が大事だと思いますか?
西野うー、個人としては告知をひたすらする。あと、ファンの人を増やす。だから私、最近Instagramを頑張ってるんです。食べ物の写真ばっかりだったけど、この時期だしなかなかおいしいものを食べに行く機会もないし、遠征でも「外で食べちゃダメ」って言われてて、テイクアウトだと写真映えしないから、もうTwitterに載せてる写真にプラスして、これからどんどん載せていこうと思って。そしたら1万フォロワーを超えたから、それで知ってくれてる人もたまに来てくれたりして、Instagramを頑張ろうって思いました。
――Instagramで「食べ物縛り」を捨てたのは大きな変化だと思いました。
西野個人で所属している事務所に、「何とか縛りをしたほうが特定のファンがつく」みたいに言われて、今までやったんだけど限界が来て。千明、食べ物ってあったらすぐ食べたいんですよ。瞬で。ラーメンとかって、ラーメンの写真を撮って、食べてる姿を撮って……って、もうそんなん絶対嫌だし、おいしくないじゃないですか! もう写真を撮るなら、パッて1枚撮って、ズズッーっと食べたいから、たぶん向いてないと思うし、こういう状況でもあるから、自分がやりたいようにやろうと思って。でも、その結果伸びたんで良かったです。
――グループとしての課題は何だと思いますか?
西野パフォーマンスですよ。歌はななちゃん(三浦菜々子)とあーちゃん(小野寺梓)が頑張ってくれてるから、もうちょっと千明も頑張ろうと思ってますし。定期公演ではユニットをやるんですけど、そこで普段歌わないところで見せつけて、声に音域限界はあるけど「出ないなりにできるところはできるよ」っていうのをちゃんと見せて、成長を見せていこうかなって。煽りも最近増えてきたから、歌うときと煽りのときで喉の使いわけをして、喉をケアしてサポートできるようにしようと思うし。ダンスも自分はすごい苦手だけど、振り付けの先生のゲッツさんに、「後ろ列で踊るときの見せ方がめっちゃめちゃうまい」って言われて。まあ、ただ背が高いからだと思うんですけど、そういう自分ができるところに特化して大きく見せたいと思います。表情も、継続していろんな表情を作れるようにしたいです。
――ダンスは本当にうまくなったと思いますよ。
西野私も思いますよ、えまにも言われた。2年ぶりに来てくれた人がいて、「千明ちゃんじゃないかと思った、昔より全然できてるし、苦手じゃないじゃん」って言われたし。本当にみんなからは「できてるよ、すごいのに」って言われるけど、やっぱり苦手なものは苦手ですよね。一生ダンスは課題。歌割りがななちゃんとあーちゃんよりも少ない分、ダンスで見せなきゃ。頑張ります(笑)。

野外ライブで水を使いたい

――河口湖の当日はどんなライブになるといいと思いますか?
西野やっぱり怪我のないように。夏は梅雨もあってジメジメして暑い時期だから、私、水を使いたいんですよね。「シャー!」って。
――欅坂46の「欅共和国」みたいな?
西野そうそう。あれ、すごい楽しそうじゃないですか。昔、三浦海岸でライブをやったときも、なんかファンの人も暑くてもビシャーって水を浴びてたぐらいだから、マスクをしているから難しいかもしれないけど、水を使いたい。ステラシアターって、後ろも開くんですよ。だから水を持ってこようと思えば持ってこられるから、楽しい曲とかでやりたい。あと、水鉄砲とか楽しいじゃないですか。フライヤーに「夏」って書いてあるので、夏っぽいことしなきゃ意味なくないですか? 水かけたい! 私はどういう風にしたいんだって言ったら、水を使って楽しくやりたくて、願望も込めて言うなら、水を使ってみんなで思いっきり夏を楽しんで、その日だけでも前みたいに戻りたい。コロナ禍を忘れながら楽しみたいってことです。
――そして、白キャンは幕張を目標にしているじゃないですか。西野さんは、今後どうなっていきたいですか?
西野私、「目の前のことをやる派」だから、なんか現実的な目標を持たなきゃと思うけど、やっぱりそこがすごい難しくて。今は河口湖じゃないですか、決まってるものがすごいおっきい。だから「これとこれとこれとこれ」ってやっていくうちに、ちょっとずつ目標に届くんじゃないかなって私は思ってるから、幕張に向けて、とりあえず目の前のことをやり遂げて上にあがりたいです。