INTERVIEW
アイドル業界を牽引する人になりたい――小野寺梓の決意ー
2022.06.29インタビュー&撮影:宗像明将
2022年7月9日に河口湖ステラシアターで「真っ白なキャンバス フリーライブ2022夏」を開催する真っ白なキャンバス(通称白キャン)。過去最大規模のワンマンライブにして、初の野外ライブ。そして、会場や山梨県など関係各所との事前相談をしたうえで、コールアンドレスポンスを解禁し、コロナ禍前のスタイルで開催されるライブだ。メンバーはどんな想いでライブに臨むのだろうか。唯一、結成時から在籍し続けてきた小野寺梓は、「アイドル業界を牽引する人になりたい」「希望を与える存在になりたい」と言ってのける。彼女が、コロナ禍でもアイドルへの執念を失わないどころか、ほかのアイドルにも自分の姿を見てほしいと考える理由とはなんだろうか?(インタビュー&撮影:宗像明将)
歓声の大きさに肯定された
- ――声出しライブをやれると聞いたときは、どう感じましたか?
- 小野寺もう自分はとにかく嬉しさしかなくて。でも、コロナ禍になってから応援してくださるファンの人の気持ちがちょっと不安なところでした。でも、基本的にはすっごい嬉しい。
- ――ファンの人の反応を見て、どう思いましたか?
- 小野寺うん、やっぱり求められてるんだなって(笑)。
- ――小野寺さんには、白キャンはファンの人に支えられている部分が大きかった、という意識もありますよね。
- 小野寺はい。昨日、江嶋(綾恵梨/26時のマスカレイド)さんのヨガに行ってきたんです。最後にクールダウンみたいなのをするんですけど、そのときに「今までで一番幸せだったことを思い浮かべてください」みたいに江嶋さんが言ったんですよ。そのとき思い浮かべたのが、ガンダムのステージ(2019年8月の『TOKYO IDOL FESTIVAL 2019』のFESTIVAL STAGE)だったんですよね。
- ――あれは私も現場で見ていたけど、すごい光景でしたね。
- 小野寺もちろんワンマンライブも生誕祭もめちゃめちゃ幸せだし楽しかったんだけど、やっぱりあのときは勝負事(『TIF2019メインステージ争奪LIVE』)の次の日っていうのがあって、勝負には負けたけど「おまえらの勝ちだよ」って言ってくれてるような歓声の大きさで、たくさんの人が見てくれて、すごい肯定されたんです(涙を流しだす)。
- ――泣いてるけど、まだ取材が始まってから5分も経ってないですよ!
- 小野寺(布で涙を拭きながら)靴下です、これ(笑)。
- ――もうちょっと衛生的なもので拭きましょうよ……。
- 小野寺でも、足の部分じゃなくて上の部分。
- ――そういう話じゃなくて……。今回、河口湖でライブをやることには、どんな意味があると考えてますか?
- 小野寺やっぱりこのままじゃダメだっていう気持ちはあるし、声出しの解禁もいつかは決断しなきゃいけないし。おこがましいですけど、アイドル業界を盛りあげる意味があると思います。
- ――今、いろんなグループの解散や卒業が多いですしね。
- 小野寺梓たちはその人たちを間近で見て育ってきて、コロナ禍前も経験してるアイドルだし。今勢いがあるグループさんって、コロナ禍後にできたグループが多いと思うんですけど、私たちが築いてきた文化も私たちがちゃんと広げたいし、残したい。このまま声出しのない文化の形になっていくのは寂しいし、声出しを経験したことのないアイドルさんも増えてきて、声出しはめっちゃ楽しいのに、それを知らないまま辞めていく人もいると思うし。経験したことがある人も、みんなの声の中で卒業してほしいと思います(涙が溢れだす)。
- ――と言いながら、目頭を拭くと。
- 小野寺やだ、いつも泣いてるじゃん!(笑)
- ――あはは。コロナ禍になって、お客さんが声を出せない状態でのライブは、どう受け止めてましたか?
- 小野寺うーん、最初はやっぱりもどかしい気持ちとかけっこうあって。梓は「コールの声が大きければ大きいほどパフォーマンスが良くなる」って言われたりするぐらい好きだったから。でも、声がないからずっとパフォーマンス悪い、みたいなのはダメだし、自分で気持ちを作らなきゃって思ってました。あと、ファンの人がマスクだし声も出せないから、反応が怖かったんですけど、顔の全部は見えないけど、表情がちょっとわかるようになったかもしれないです。
- ――小野寺梓っていう人にとっては、もどかしい気持ちがものすごく大きいだろうと思ってたんですよ。MIXやコールにすごく肯定的だったから。
- 小野寺でも、プラスにとらえて。例えば、おっきい会場になったときのためにペンライトを振ってくる人がもしかしたら増えるかもしれないとか、大きい会場に行くときに自分たちのパフォーマンスが良くなかったらだったらダメだから、この間にパフォーマンスで見せるようになろうと思ったりはしました。
- ――声出しができなくなってから、パフォーマンスで特に意識した部分はありましたか?
- 小野寺とにかく歌です、自分自身は。コールって、歌を隠してくれるところもあるじゃないですか。自分は歌に自信がないから、それをファンの人が支えてくれてる感覚だったけど、もう歌しか聴こえないので、「ああ、ダメだな」と思って。自分の中では歌ですね。グループとしては、振りを揃えたりとか、フォーメーションきれいにしたりとか、そういうところでしたね。
- ――鈴木えまさんと麦田ひかるさんが再加入して、今7人の白キャンとして、どういう感覚ですか?
- 小野寺やっぱり梓にとっては一から作ってきた仲間だから、えまとひかるが戻ってきて、私は良かったって思います。
- ――そう言いながら、ウエットティッシュで目頭を押さえてますね。
- 小野寺泣いてないです(笑)。えまとひかるがやりきって辞めたかったっていうと、梓はまだできると思って引きとめてたから、また挑戦しようって思ってくれたのが嬉しいし、その場所が白キャンだったのが嬉しいし。白キャンでこれから何か達成できるときに、一緒に経験できることも嬉しいです。たしかにパフォーマンスは、やっぱり5人のほうが揃えやすいっていうのはあるけど、レッスンでめっちゃ揃えると、次のライブでその曲はめっちゃ揃ってるのが動画を見るとわかるんですよ。だから、それを重ねていくしかない。やっぱりパフォーマンスが良いだけがグループの魅力じゃないと思っちゃうんです。Berryz工房さんが好きだったし、やっぱりメンバーの関係性があってこそ、そのグループが好きだったから。ただ「できる子」を集めるのもいいかもしれないけど、今の白キャンはすごくいいと思います。
人生の最期に走馬灯で流れてくるようなライブがしたい
- ――その白キャンにとって、河口湖でのライブの成功に向けての課題は何だと思いますか?
- 小野寺集客力(笑)。
- ――現実的だ(笑)。集客のためには何をしたらいいと思いますか?
- 小野寺梓はけっこうつらいことしたくて(笑)。本当はチャレンジ企画とかやりたいんですよね。例えば、「何々を達成しないといけない」とか。2020年の3周年ワンマンライブの前にしたみたいに合宿でもいいけど、それが集客につながるかって言ったら……パフォーマンスは上がると思うけど。地道に全然ビラ配りとかしたいし、もう地域住民の方にも配りたい(笑)。
- ――地元住民の方に来てもらうのはいいアイデアだと思います。
- 小野寺お祭りみたいな感覚で、ポストイット? 何だっけ?(笑)
- ――ポスティング?
- 小野寺ポスティングもしてみたい。チャレンジ企画なら500キロマラソンでもやります。話題になれば集客になるかも。なんか泥臭いことがしたい。ヒリヒリ感とか焦燥感みたいな(笑)。
- ――そういう気持ちを抱えながら、当日はどんなライブにしたいでしょうか?
- 小野寺人生の最期に走馬灯で流れてくるようなライブ。
- ――重い!
- 小野寺あはは。またこういうライブがいつできるかわからないし、もしかしたらこれが最後かもしれないし。
- ――最後にはならないですよ!
- 小野寺本当ですか? でも、わかんないじゃないですか? ほんとに今のアイドル業界って、いきなり「今日で終わりです」って消えちゃう人もいるじゃないですか。青木(勇斗/プロデューサー)さんがそうするとは思わないけど、何があるかわかんないから、マジで一秒一秒を噛みしめながら、めっちゃ楽しみたいですし、ファンの人もそう思ってくれるようなライブにしたいです。ファンの人の走馬灯にも流れてほしいですよ(笑)。梓たちもコロナ禍のモヤモヤした気持ちを全部発散するから、みんなも全部発散してほしい。デトックス!(笑) なんか、ほかのアイドルさんの希望にもなりたい。めっちゃでかいこと言うけど(笑)。
- ――でも、そういう気持ちは大事だと思います。いろんなアイドルのインタビューで、今は小野寺さんの名前が出てくるんです。もう小野寺さんは理想のアイドルになっているんですよね。
- 小野寺(照れくさそうに笑って)そうなっていたいですね……。
全人類を救えるように頑張りたい
- ――ただ、シーンの状況的には、アイドル当事者としてはしんどい約2年だったんじゃないですか?
- 小野寺諦めちゃう気持ちが出そうになっちゃいました。梓って、アイドルへの執念かなり強いタイプだと思うんですよ。その梓が「あ、もう無理かも、辞めたいかも」みたいなのが一瞬でも頭をよぎるってことは、「そりゃあ、ほかのアイドルさんも辞めるわ」みたいな。けっこう気持ちを保つのが……。
- ――どういうときに辞めたいと思いましたか?
- 小野寺ほかと比べたときとか、未来を想像したときとか。でも、それは一瞬だから大丈夫、前向きです。
- ――良かったです。アイドルだから、辞める人の気持もがわかってしまうわけですよね。
- 小野寺そう。だからうちらがめっちゃいいライブをして、「あ、もうちょっとだけやろうかな」ってアイドルさんに思ってほしいんです。みんなに「あ、頑張ってもいいかも」って思ってほしい。ほかのアイドルさんと話すと、意外に白キャンって見られてるんですよ。
- ――みんながアイドルを続けようと思うきっかけに自分がなりたい?
- 小野寺めっちゃそう思います。
- ――そして白キャンは、かねてからの目標の幕張メッセに向かっているじゃないですか。今後どうなっていきたいでしょうか?
- 小野寺やっぱりアイドル業界を牽引する人になりたいです。今いろんな解散とかが多いなかで、「アイドル業界を牽引するアイドルって言ったら小野寺梓」みたいな存在にはなりたいし、希望を与える存在になりたいですね。こう言うとファンの人はみんな怒るけど、やっぱり梓は万人受けする顔じゃないし、白キャンの中でも一番個性的な、好き嫌いがわかれる顔だと思うんですよ。それなのに、これからもっと頑張って、牽引する存在になれたら、「この人はこの顔なのにここまで!」ってなれるかもしれないし。生きる希望になりたいです。
- ――でもね、人の希望になるっていうのは、ファンの人だったり、ほかのアイドルだったり、他人の人生を背負うことにもなるじゃないですか。他人に勝手に希望を託されて、勝手に「失望した」と言われる可能性もある。怖くなる瞬間はないですか?
- 小野寺ないです。でも、もともと死にたくて、アイドルが終わったら死のうって思ってたのに、今は死んだら悲しむ人が出ちゃうんだって気づいて……どうしようと思って(目が涙で潤む)。
- ――じゃあ死ねないですよね、アイドルが終わったとしても。
- 小野寺死ねないから困っちゃいます(笑)。だから梓は、みんなの気持ちを受けとめたい。全人類を救えるように頑張ります。